八王子といえば、羽生善治九段も通った「八王子将棋クラブ」が有名ですが、伊藤真吾五段も、同将棋道場で幼年期から将棋の腕を磨いてきました。
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【記事】
「八王子将棋クラブで35連敗しました」伊藤真吾五段がプロになるまでの過酷すぎた道のり
(2019年12月30日 文春オンライン)
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191230-00022471-bunshun-soci
YouTubeチャンネル『イトシンTV』の伊藤真吾五段

伊藤真吾五段と嫁Pが語る、『イトシンTV』の「イェイイェイ!」が生まれるまで から続く
https://bunshun.jp/articles/-/22470
【動画】『イトシンTV』の「将棋ウォーズ」対局を見る
https://bunshun.jp/articles/-/22470?utm_source=headlines.yahoo.co.jp&utm_medium=referral&utm_campaign=partnerLink&page=3#youtube
出演するYouTubeチャンネル『 イトシンTV 』が、大きな注目を集める伊藤真吾五段は、1982年生まれ。出身地は東京都八王子市である。八王子といえば、羽生善治九段も通った「八王子将棋クラブ」(2018年閉店)の名前を思い浮かべる人も多いだろうが、まさに伊藤さんも、この将棋道場で幼年期から将棋の腕を磨いている。
インタビュー後編となる本稿では、伊藤五段の将棋との関わり始めと、プロ棋士としての歩みから話を聞いていきたい。(全2回の2回目/ #1 へ)
いつも父親に負けて泣いていました
――将棋を始められたのは、何歳のときですか?
伊藤 5歳のときですね。アマチュア五段の父親から教わりました。
――どんな指導でした?
伊藤 今思うと、スパルタでしたよね。父親は負けることができたはずなのに、全然、負けてくれない。だから、いつも泣いていました。そして、気がついたら八王子将棋クラブに通っていて、そこでも最初は35連敗くらいしたんですよ。
――お父様も一緒に八王子将棋クラブに?
伊藤 父はそこに40年以上通っていたんですよ。それこそ羽生さんが子供の頃に指しているらしいですね。
――プロになろうと思ったのは、いつ頃ですか?
伊藤 小学4年生のときですね。その頃、師匠(桜井昇八段)に入門して。そこは奨励会を目指す人も多く、まず研修会に入りました。そして6年生のとき、11歳で奨励会に入会しています。
14勝を挙げてもプロになれなかった三段リーグ
1993年に奨励会に入会した伊藤さんは、9年かけてプロへの最終関門である「三段リーグ」まで上り詰めた。半年に一度行われるリーグ戦で上位2名の成績を挙げれば晴れて四段(プロ)としてデビューできるのだが、ここからが大変だった。
――少し調べたのですが14勝を2度、13勝を1度という成績で、一度も三段リーグの2位以内に入れなかったのは伊藤さんだけだとか……。
伊藤 三段リーグで14勝すれば、だいたいプロになれるんですよ。14勝1回でプロになれなかった人はいるんですけど、14勝2回でプロになれなかったのは僕だけですよ。まあ、あのときは粒ぞろいで強い人が多かったんですよ。1回目14勝で上がれなかったときは広瀬さん(章人八段)と長岡さん(裕也五段)がいましたし、2回目14勝だったときは、佐藤天彦さん(九段)と戸辺誠さん(七段)がいました。
やっぱり棋士は、対局で強くなるんですよ
2007年、伊藤さんは25歳のときの三段リーグで13勝5敗の成績を上げ2度目の次点となり、プロデビューを果たした。同時に四段に昇段した2人は金井恒太六段と、豊島将之名人・竜王である。
通常三段リーグを通過して棋士になれるのは上位2人だが、次点となる3位を2度取れば、プロ入りすることができる。ただし、順位戦の参加資格はない「フリークラス」からの参入で、10年以内に規定の成績を上げなければ引退という厳しい決まりがある。
伊藤五段は、順位戦に参加する資格をプロ入りから4年7カ月後に得て、フリークラスを脱出している。
――フリークラスで戦うというのは、どういった感じですか?
伊藤 きついですよ。収入が少ないというのもありますけど、やはり対局が少ないのが辛い。やっぱり棋士は、対局で強くなるんですよ。対局に向けて対戦相手のことを勉強して、モチベーションを上げていく。こういうことの繰り返しで強くなるんです。順位戦がないと、年間で最低10局は違うので、これはなかなか辛かったです。ただ目標として、フリークラスを抜けるというのがありましたからね。本当は1、2年で上がれればよかったんですが……。
――4年7カ月は長かったですか。
伊藤 この世界、1年目よりも10年目のほうがきついんですよ。強くて若い人がどんどん入ってきますからね。だから、あのときが最後のチャンスだったんでしょうね。ただ、1、2年で上がっていたら、妻と出会っていないかもしれません……。だからいつが良かったのかは、わからないですけどね。
棋士と漫画家アシスタントで合コンしました
人間万事塞翁が馬。人にとって何が良いことかは、後になってみないとわからないというニュアンスで、伊藤さんがフリークラス時代を振り返っていたのが印象的だった。それだけ奥さんである嫁Pさんとの出会いは、とても大きなものだったのだろう。そんな嫁Pさんとの馴れ初めも聞いてみた。
――伊藤さんと奥様は、どういった縁で出会ったのですか?
嫁P 合コンです(笑)。
――そうなんですか(笑)。
嫁P 棋士5人と、漫画家アシスタント5人で合コンしました。飯島さん(栄治七段)がセッティングしてくださったんですよ。
実はそのあたりの事情が、少しばかり『 将棋の渡辺くん 第4巻 』(伊奈めぐみ/講談社)に出ている。もともと、伊藤さんが体調不良で友人たちとの予定に行けなくなり、飯島栄治七段に代打をお願いしたところ、その場で出会った女性と飯島さんが結婚。その恩返しの意味もあり、当時、将棋漫画の監修をしていた飯島さんが、棋士5人と、漫画家アシスタント5人の合コンを設定。そこで伊藤さんと嫁Pさんが出会って結婚に至っている。
伊藤 たまたま家が近かったんですよ。帰り一緒だったよね?
嫁P そう。帰り一緒でした。
――それはいつ頃の話ですか?
伊藤 僕が30歳くらいでしたね。
嫁P 女子は、全体的にもうちょっと上で。
――じゃあ、棋士とお姉さんチームの合コンですね。
伊藤 だから僕あまり興味なかったんですよ(笑)。
――ははは(笑)。それがちょうど、フリークラスから上がった頃ですか。
嫁P 合コンのとき「フリークラスから上がった」という話を聞いた記憶があります。
――いいことが重なった時期だったんですね。
伊藤 ちょっと調子に乗っていたんでしょうね。
9割以上は嫁Pがやっています
伊藤さんはこのインタビューの間、なんども「妻のおかげ」「妻がいたから」という言葉を口にした。『イトシンTV』における、嫁Pさんの役割は、どれほどのものなのだろうか。
――そもそもの話なんですが『イトシンTV』では、伊藤さんは出ているだけで、その他、撮影や編集などは、すべて嫁Pさんが行なっているんですか?
伊藤 そうです。嫁Pの存在を明かしていなかったときは「誰が編集をしているのか」とちょっとざわついていたんですよ。始めた当初は、週に6回、それこそ対局の前日とかにもアップしていたので「こいつ頭おかしいんじゃないか」と思われていましたね(笑)。でも今では9割以上は嫁Pがやっているということを、みなさん知っています。
――撮影と編集には、だいたいどれくらいの時間がかかるんですか?
嫁P 動画1本の撮影時間は、だいたい30分くらいで長くても40分ほどです。ただ編集作業は、今は4、5時間かかるようになりました。
――けっこう長いですね。
伊藤 僕が話した言葉を文字起こしして、テロップを入れてくれているんですが、それがけっこう大変なんです。
嫁P 大変だけど、見てくれる人には好評なんですよ。一度、耳の不自由な方から「文字で書いてあると助かる」といったコメントをもらったので、じゃあ頑張ろうと時間をかけてやっています。
どんどん機材が増えていく
――ファンからのコメントは、力になりますね。
嫁P いろんな動画を見ているみなさんは目が肥えていて「サムネが凝っているね」とか「編集の腕が上がったね」とか、褒めて欲しいところを褒めてくれる。時間をかけてアップした動画をそんな風に言ってもらえると、細かいところまで見てくれるんだなとやる気が出ますね。ただ、文字起こして、音もよくして……となると、どんどん大変になっていくし、機材も増えていく(笑)。
――機材は、どういったものを?
嫁P 最初に買ったのは、スマホ用の三脚ですね。次に、ナレーターの友達が「音響がよくないとダメ」というので音響機材を買いました。あとライブ配信をしたとき「顔が暗い」と言われたのでライト。それと『将棋ウォーズ』用にiPadも買いましたね。
伊藤 いろんな人の反応を聞きながら、バージョンアップしている感じですね。友達がアドバイスしてくれるので助かっています。
――将棋の大盤も購入されたんですか?
嫁P 棋士の村中秀史さん(七段)が『むらチャンネル』で、初心者向けに番組を作って、好評を得ているというので導入を検討していたんです。
――ライバル局の動向を意識して(笑)。
嫁P そうです(笑)。そしたら、大盤を持っている人が貸してくださったので使っています。でもこの大盤解説の分は別に撮影するので、また編集が大変になったという(笑)。
嫁Pはプロとしか指したことがない
――やはり、想像以上に大変なんですね。
伊藤 だから将棋界にも気軽に勧められないんですよ。僕の場合、妻がたまたまできる人だったのでやれましたが、ひとりだとなかなかしんどいと思います。やっぱり協力してくれる人がいないと難しいですよね。
――今、嫁Pさんは《【嫁P】ゼロから始める!将棋道場への道!》という企画に、自ら出演もされていますよね。
伊藤 『将棋ウォーズ』の実況がどんどん上級者向けになっていて、これはいけないと。そこでわかりやすい「育成系」をやろうとしたのが嫁P企画です。
――タイトル通り、嫁Pさんが将棋道場を目指して、ルールや将棋の基礎を学ぶ番組ですね。嫁Pさんは、将棋はまったく?
嫁P 漫画の背景とかで描いたことはありますが、ルールも怪しい。
伊藤 そんな嫁Pが、最終的には将棋道場に行って、その感想なんかを伝えられたらいいなと思っています。
――嫁Pさんは、まだ、人と指したことがないんですか?
伊藤 僕だけですね。
――プロとしか指したことがない(笑)。
嫁P そうですね(笑)。
「ユーチューバーあるある」は?
以前、伊藤さんがツイッターで「棋士あるある」をつぶやいて話題になったことがあった。
「同世代意識しがち」「同期曖昧になりがち」「少し優勢な局面でボヤきがち」「対局の後、眠れなくなりがち」といった、棋士の習性を表現したものだが、最後に「ユーチューバーあるある」を聞いてみた。
伊藤 そうですね。「カメラに目線を送りがち」とか(笑)。
――対局の中継でもついカメラを見てしまう。
伊藤 そう(笑)。意識してカメラ目線を送ってしまいます。あと「なにかあると動画制作意識しがち」ですかね。
嫁P ふふふ(笑)。「これで1本、撮れるかな」と、つい思ってしまいますね。
――たとえばどんなことで?
嫁P いつも「グラニフ」というブランドのTシャツを着ているんですよ。今度、お正月に福袋が出るので「福袋開封」で1本作ろうかと(笑)。
伊藤 そう! 10年くらいずっとグラニフを着ているんです。将棋のTシャツも出ているんですよ。福袋は7枚のTシャツが入っているらしいので、盛り上がるかな。
――じゃあ、そのうち「グラニフ」さんからCMの依頼があったりするんじゃないですか?
伊藤 いやあ。引っ込み思案な性格なので、自分からは売り込めないんです(笑)。
なるほど。ということなので代わりに売り込んでおきましょう。グラニフさん、『イトシンTV』いかがですか? 夫婦二人三脚で制作している、アットホームで楽しい番組ですよ。