2018年07月03日

八王子市に建設した「月舞台」を住居兼事務所とする建築家の落合俊也氏が、日本で発展した学問分野「森林医学」を建築に応用することを提案

 2007年、八王子市に建設した「月舞台」を住居兼事務所とする建築家落合俊也氏が、日本で発展した学問分野「森林医学」を建築に応用することを提案しています。

 木材の「生きている素材」としての価値に着目した活動を展開している同氏。

 最近、多摩産の木材「多摩産材」なども最近注目されるようになりましたから、ぜひ多摩産材を利用した建築物を見てみたいですね(^^)

森林・環境建築研究所(八王子市絹ケ丘) https://www.fb-studio.jp/


【記事】
建築へ/建築家・落合俊也氏に聞く/木造建築に「森林医学」の視点
(2018年6月29日 日刊建設工業新聞)
https://www.decn.co.jp/onlineservice/News/detail/3201806291801

◇木が持つ本来の良さを生かす

 木造建築を再評価する機運が高まる中、建築家の落合俊也氏が木材の「生きている素材」としての価値に着目した活動を展開している。CLT(直交集成板)の普及促進など、現在の木材利用を「工業化の側面が大きすぎる」と指摘。木が持つ本来の良さを生かすためにも、日本で発展した学問分野「森林医学」を建築に応用することを提案している。(企画部・沼沢善一郎)

マンションではバルコニーの緑化が効果的だ
建築家・落合俊也氏1.jpg

 落合氏は、学生時代から伝統木構造や大工技能を学び、卒業後は木造建築の第一人者として知られる杉坂智男氏に師事。14年に杉坂建築事務所から独立し、設計事務所「森林・環境建築研究所」を立ち上げた。

 07年に建設した「月舞台」(東京都八王子市)は、伝統軸組み工法と高断熱高気密化の両立を目指した自身の住居兼事務所。自然乾燥させた杉材の柱や梁(はり)がむき出しになった真壁仕上げの空間に、多くの「パッシブ設計」の要素を盛り込んだ。季節や時間帯に応じて日差しの取り入れ量を調節できるよう建具を配置し、室内の温度差を利用した換気・通風、地熱を伝える土間床などを採用。無駄なエネルギーを使わずとも一年を通じて快適な環境が維持できる空間を生みだした。

 落合氏は「太陽のエネルギー(太陽光、太陽熱)を利用するだけではなく、太陽が持つリズムを利用するべきだ」と主張する。太陽の周期が生むサーカディアンリズム(概日リズム)は、自然界に作用して人間の生理現象に欠かせないとされる。そのリズムに同調するように設計された建物であれば、安眠やストレス軽減の効果が得られ、人間の健康向上に寄与できると考えた。

 そうした考えを突き詰めたのが、「建築に森林の構造を取り入れる」という発想だ。背景にはスリランカの熱帯雨林での強烈な経験があるという。

熱帯雨林ではその環境の中に建築がある
建築家・落合俊也氏2.jpg

 「熱帯雨林は五感を刺激する信号であふれている。あらゆる生物がすさまじい騒音を発しているはずなのに、それが不思議と快感だった。生物の多様性の中でリズムの同調を感じ取り、人間は心地よさを味わうのだと実感できた」

 自然界のリズムと同調するには、天然の木材が最適な材料だ。木材には、品質が一定せず施工後も変形しやすいという欠点があるが、それを工業材料として加工して覆い隠してしまえば、天然素材としてのポテンシャルは引き出せない。「木には年輪や節、凹凸があり、香りもある。それらは森の中で遺伝子を進化させた人類にとって必須のもの。視覚や触覚、嗅覚といった人体への刺激信号を損なわずに仕上げることが大切だ」と強調する。

 落合氏は建築設計に当たって、「森林共生」というコンセプトを掲げる。科学的な根拠として森林医学の知見をフル活用する。例えば、木材の木口からは良質な成分が分泌されることが分かっているため、一般的な軸組構法ではふさがってしまう木口をわざと露出させて組んでいる。

落合氏が設計を手掛けた木造住宅
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 森林医学の国際学会の理事を務め、建築物や都市計画に生かす方法も模索する。「森林医学には(予防医学的な効果が認められた)森林セラピー基地を認定するためのノウハウが蓄積されている。それを街づくりの実証などに生かせるのではないか」と思い描く。

 ここ数年、木造建築物の不燃化や大規模化の要請を受け、CLTをはじめとした集成材の利用拡大が急速に進んでいる。落合氏も木材の工業材料としての発展を歓迎はしているものの、他方で「木材の可能性を一つに絞ってしまえば、木が本来持つ生命としての機能を使わない文化になってしまう」と危機感を抱いている。木材利用のもうひとつの可能性を開くため、あくまで天然素材としての価値向上にこだわる。

 「森林共生」という考え方には、さまざまな応用可能性がある。現在は個人住宅を中心に設計を手掛けているが、都市型マンションのリフォームの相談も多い。落合氏によると、スケルトン状態であれば、バルコニーの全面緑化や天然素材による内装の木質化が比較的容易だという。リゾート地にある自然環境を「究極の観光資源」と考えれば、森林浴に近い効果を引き出すようなリゾート施設づくりも可能だとみる。

落合俊也氏
建築家・落合俊也氏4.jpg

 落合氏自身、草の根レベルでの賛同者の広がりに手応えをつかんでいる。「森林共生」への理解を広げるため、森林浴を体験してもらう一般向けイベントも頻繁に主催する。「建築をやっていると、実現できるかどうかばかりにとらわれ、理想を考えることを放棄していると感じることがある。まずは何が理想なのかに目を向けることが必要だ」と落合氏は語る。

 木材の価値に着目した「森林共生」が木造建築の新たな潮流となる可能性を秘めているといえそうだ。
posted by 銀河流星 at 23:00| Comment(0) | アート・展示会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする